LOGIN♢ミリアとの合流と計画
娘を連れてミリアの屋敷に連れてきた。門の前に立つ屋敷は、その規模と豪華さで娘を圧倒した。娘の目は、驚きと警戒心で大きく見開かれている。きらびやかな装飾や、門番の厳めしい姿に、彼女は息をのんだ。
「どこに連れて行くのよ……」
娘は、不安そうに俺を見上げた。声には、わずかな怯えが混じっていた。
「この屋敷だけど」
「は? もしかして……貴方も、わたしをこの屋敷の主に売るつもりなの!?」
娘は怯えたように目を丸くし、声が上ずる。その体は、恐怖で小刻みに震えていた。その表情は、絶望に打ちひしがれているようだった。
「違うっての……」
俺は、呆れたようにため息をついた。
「じゃあ何で、こんなデカくて立派な屋敷に連れてきたのよ!嘘つき!ばか!人拐いだって町の警備兵に言うからねっ!」
逃げようとするので腕を掴んで引き止めて説明をした。彼女は、じたばたと暴れようとしたが、俺の力には敵わなかった。その抵抗は、まるで子供の駄々っ子のようだった。
「ここで保護してもらうから少し待っててよ。中に入るのが恐かったら、屋敷に入らなくても良いけど門の外には出ないでよ?拐われても困るし」
「……それなら良いわ」
娘は渋々ながらも納得したようだ。屋敷の門の護衛の兵士を見ると……
「あれ? 王国の兵士が何でいるの?」
娘は兵士たちの堂々とした姿に驚いている。その瞳は、純粋な疑問で満ちていた。彼女の顔には、混乱と戸惑いが浮かんでいた。
「あ~国王と知り合いだから」
俺は、適当に答えた。
「え? 知り合いなの? なんで?」
うわ。面倒……。どう説明したものか、一瞬言葉に詰まった。彼女の好奇心旺盛な瞳が、俺の返事を待っていた。
「時間がないから後でで良い?」
「ううぅ……分かったけど、少し安心したわ」
信用してもらえたらしくて、娘は俺と一緒に屋敷に入った。中に入ると、娘はキョロキョロと目を輝かせて屋敷の中を見回していた。その表情からは、今までの不安が少し薄れているのが見て取れる。まるで、初めて見るおもちゃに夢中になった子供のようだ。壁に飾られた絵画や、磨き上げられた床に、彼女の視線は釘付けになっていた。
「ユウヤ様! どちらに……ううぅ……そちらは? どちら様ですの?」
リビングから降りてきたミリアが、俺を見ると嬉しそうに駆け寄ってきたが、娘の姿を見ると途端に不機嫌そうな顔をして、ジト目でじっと見つめてきた。階段から下りてくる豪華なドレスを着ているミリアを見て、娘は屋敷のお嬢様だと理解し、緊張して固まった。ミリアの青く透き通ったキラキラした瞳が、今はわずかに警戒の色を帯びている。その視線は、まるで侵入者を測るかのように鋭かった。
町であった事をミリアに説明して納得してもらえた。ミリアの表情が、徐々に和らいでいく。警戒していた瞳にも、温かさが戻った。彼女の口元には、安堵の笑みが浮かんでいた。
「そうだったのですね……また人助けですか♪」
ミリアはご機嫌な笑顔を浮かべる。その声には、俺の行動を喜ぶ気持ちが込められていた。
「ミリアも一緒にお金を借りに行く?」
俺は、ミリアに提案した。
「うふふ……♪ 面白そうですわねっ。当然、ご一緒致しますわ」
ミリアは楽しそうに笑った。その笑い声は、鈴が鳴るように心地よかった。彼女の"青く透き通った瞳"は、冒険心を宿しているようだった。
「じゃあ着替えてきて、平民の服ね」
「はぁい♪」
ミリアは嬉々として階段を駆け上がっていった。その足取りは軽く、まるで踊っているようだった。彼女の心は、すでに新しい冒険へと向かっているかのようだった。
♢任務前の準備と王城への移動「それと……ミリアのお父さん役は……軍の人が良いかな。」
俺は隣で控えていたメイドに小声で尋ねた。メイドは心得たように頷いた。すると、ミリアが着替えてリビングに降りてきた。シンプルな平民服だが、彼女が着るとどこか上品に見え、その優雅な立ち振る舞いは隠しきれていなかった。
「よし。じゃあ、ここで待っててね」
俺がそう声をかけると、娘は緊張してガチガチに固まっている感じになっていて、これじゃトイレにも行けないんじゃないか? その顔は強張り、瞳は不安そうに揺れていた。一応、近くに居たメイドさんにお世話を頼んでおいたが大丈夫か? メイドは、娘の不安な表情を見て、優しく頷いてくれた。その笑顔は、娘を安心させるには十分だっただろう。
「どちらに行きますの?」
ミリアの"青く透き通ったキラキラした瞳"が、興味津々といった様子で俺を見上げた。新しい冒険への期待が、その瞳に宿っているのが見て取れた。
「まずはお城かな」
俺は簡潔に答えた。
馬車に乗って、お城まで移動した。王城の門を御者が帝国の旗を掲げると、検問を素通りをして王城の入り口まで馬車で入って来れた。俺とミリアが平民服を着ていたので兵士達が驚いていたが、顔を知っているので問題なくて良かった。彼らの目が、俺たちの姿を捉えて大きく見開かれるのがわかった。
ミリアの雰囲気が、今までは少し怒っていて平然と冷静に対応をしていた感じだったが、今は、ユウヤが監禁されている不安と、早く助けなければと焦り、それに対する怒りが混ざった表情になっていた。「貴方……何をしたのか理解していますの?」 また怒ったミリアの表情を見ても、レスニーが平然とした態度で答えた。「どうせ、そちらの二人の王女の婚約者候補じゃないのかな? 余計な婚約者候補に居られると迷惑ですし楽しい食事と会話の邪魔ですし、見るのも不愉快ですので別室でおもてなしをさせて頂いてます。私がお二人の王女の正当な婚約者になるんで、そんな不要な婚約者候補は必要ないのでご退場いただきました」「違いますわ……わたしの婚約者ですわよ」 ミリアは、怒りに震える声で言い放つ。「はぁ? あんな男がですか? 皇女である貴方が、あのような男をお選びに?」 レスニーがバカにした様な笑みを浮かべて言うと、ミリアが怒った表情で護衛に指示を出す。ミリアの表情で察した護衛達がレスニー王子を捕らえ、もう一人の護衛がミリアから手紙を数枚受け取り、外へ走って部屋を出て行った。「この王国の第一王子の私に、この様な無礼な事をしてただで済むと思うなよ!」 レスニーは、捕らえられながらも叫んだ。「何を勘違いをしているのか知りませんが……貴方は、もう王子ではありませんわよ」 ミリアは、冷たい声で静かに言い放った。ミリアは、皇女の婚約者誘拐と、他国の王女の誘拐と監禁の罪でレスニーを罪人として捕らえた。国王もそれを加担している可能性があり、また阻止できなかった罪がある。場合によっては、国王の座を剥奪することも考えていた。「お前こそ何を勘違いをしているんだ? 私の父は国王だぞ!? 最強の国王なんだぞ!? しかも帝国の支配国の王国で一番の軍事力を持つんだぞ! 分かっているのか!?」「ですから何ですの?」 ミリアが平然とし冷たい目でレスニーを見つめて答えた。「だから帝国の支配国の王国で一番の軍事力を持っている
「そう怒らずにお願いしますよ。可愛い顔が台無しですよ、ミリア様」 イケメン王子は、ミリアが皇女であるにもかかわらず、全く恐れる様子がない。自分に絶対の自信があるのか、それとも元来こういう性格なのか……。ユリシスとシャルロッテは、そのただならぬ空気に緊張して、二人のやり取りを見ていた。「不愉快ですわっ!」 ミリアが、怒りに満ちた目で睨みつけるが、イケメン王子は平然としていた。それどころか、その平然とした態度に、見ていたシャルロッテとユリシスの方が、ミリアの反応と表情を見て怯えていた。ユリシスは、昨夜と全く雰囲気の違うミリアに怯えていた。昨夜シャルロッテに怒っていた雰囲気とは、まるで別物だったのだ。 平然とした感じで、空気を読めないのか、レスニー王子が口説くような口調でミリアに語りかけた。「おもてなしが、気に入りませんでしたか?」 ムッとした表情で、ミリアはまっすぐにレスニー王子を見つめて答える。「ええ。食事をしに来たのではなく、注意をしに来たのですわ! 貴方が気に入ったからといって手段を選ばずに手に入れる行為は、王族として恥ずかしいですわよ!」 ミリアは、イケメン王子の情報を事前に掴んでいた。気に入った物や女性を、権力、武力、財力を使って好き勝手に手に入れていると報告を受けていたのだ。「私は恥ずかしい行為だとは思っていません。気に入った物を手に入れるために努力し、知力、己の財力、武力、権力等の力をフルに使い手に入れることのどこが恥ずかしいのでしょうか?」 レスニー王子は、まるで格好良いことを言っているかのように胸を張る。だが、その言葉はすべて、親の権力、財力、武力に頼っているだけだ。知力、努力というのは、しつこく求婚を続けているというだけで、一方的な思いだと気付いていない。相手が断っているのを無視して、全く聞いていない一方的な思いを押し付けているだけなのだ。「それが女性だとしてもですか?」 ミリアは、鋭い視線を向けた。その青い瞳は、氷のように冷たくレスニーを射抜く。「はい。問題ありますか?」 レスニー王子は、悪びれ
(冒険者は何をしてるんだ? これじゃ商人が安全に商売ができなくて、他の王国からの物流が止まるんじゃないのか?) そんなことを考えていると、ライナー王国の領地に入った途端、モンスターの姿は一切見えなくなった。馬車の中で、ユウヤはホッと息をつく。移動中は色々とミリアと再確認できたし、頬を寄せ合ったりして癒やされた。その思い出が、彼の心を穏やかに満たしていた。 着いた場所はまた王城だった。馬車を降りて見上げると、その巨大な城壁にため息が出る。(まあそんな気はしてたけどね……。王城とミリアの屋敷以外に行く場所って、ほとんどないよな)「また王城なんだ?」「はい。大事な用がありまして……」 中から貴族風とはまた違った、煌びやかな服を身につけた、絵に描いたようなイケメンの男が優雅な足取りで現れた。歳の頃は、ユウヤより少し上くらいだろうか。「これはミリア様、お久しぶりです」 男はミリアに近づき、その端正な顔に甘い笑みを浮かべた。「そうですわね……」「相変わらずお美しいですね」 ミリアは、気まずそうにチラッチラッとユウヤの方を見てくる。ユウヤは、そんなミリアを気にするまいと努めていたが、内心ではイラッとしていた。ミリアにヤキモチを妬いたわけではない。ただ、目の前のイケメン王子がミリアに馴れ馴れしいのが気に食わなかった。なんだかチャラい感じだ。ウザい。ミリアも不快そうな顔をしている。「そんなお世辞は要りませんわよ」 ミリアが冷たくあしらうと、イケメン王子は全くめげることなく、柔らかい笑みを浮かべたまま言葉を続ける。「立ち話しでは失礼なので、お部屋にご案内を致します」(なんだコイツは……やけに親しげな感じだな……) ユウヤは、もし馬車での出来事がなければ、また暴走していたかもしれないと内心で苦笑する。いや、さすがにそれは無いか。 シャルとユリも到着すると、イケメンは顔を輝かせ、
「……意思が、ありますから勇気を出してキスをして欲しいと言ったのですわよ……」 その声は、恥じらいと真剣さが入り混じり、か細く震えていた。ミリアは、潤んだ瞳で俺を見上げている。「あ、そうか……だよな。分かった」 俺は、ミリアの真摯な想いに触れ、ゆっくりと体を起こした。膝から頭を離すと、背中まで届く淡いサラサラの金髪が、滑り落ちるように肩を伝った。その髪から、彼女の甘い香りがふわりと漂ってくる。狭い馬車の中で、二人の顔がゆっくりと近づいていく。互いの吐息が、温かい空気となって頬にかかる。 向かい合ったミリアの瞳は、まるで宝石のように美しい青色で、期待と不安で大きく揺れながらも、じっと俺を見つめ返していた。その瞳の輝きに、俺は思わず見惚れてしまう。 ぷるんとしたミリアの唇に、俺の唇が優しく触れた。全身をビクッと震わせたミリアは、驚きと喜びが混じった、甘い吐息を漏らした。その唇から、微かな甘い香りがした。俺の唇に触れた彼女の唇は、柔らかく、温かかった。キスを終え、顔を離すと、ミリアは美しい青い瞳を大きく見開き、頬をさらに赤く染めていた。その可愛らしい反応に、俺の胸は高鳴るのだった。 キスを終え、顔を離すと、ミリアは潤んだ美しい青い瞳で俺を見つめながら、甘い吐息を漏らした。「んっ、ん……っ、はうぅ……♡ んんっ……♡ ぷはぁ~♡」 その吐息は、熱を帯びていた。ミリアは、恥ずかしさからか、震える手で顔を覆い隠した。「これで良いか?」「……は、はい……♡ じゅ、十分……満足ですわっ♡」 ミリアは、顔を覆った手の隙間から、上目遣いで俺を見つめてくる。その仕草の可愛らしさに、俺は胸の奥がキュンと鳴った。俺の心臓は、まだドクンドクンと激しい音を立てていた。 再びミリアに膝枕をしてもらい横になると、彼女は震える手で、俺の淡いサラサラの金髪を優し
そんな穏やかな時間の中、玄関の扉が勢いよく開く音が響き、廊下を駆ける軽快な足音が聞こえてきた。「ただいま戻りましたぁ~♪」 リビングの扉が勢いよく開くと、満面の笑みを浮かべたシャルロッテが、元気良く飛び込んできた。その顔は、まるで太陽のように明るい。「その表情だと許可を貰えたようですわね」 ミリアは、そんなシャルロッテの顔を見て、安心したように微笑みながら言った。 シャルロッテは、胸を張って、元気良く返事を返した。「はいっ。当然ですわっ」「では、最後に、ご自分でユウヤ様の許可をお取りになって下さい」 ミリアにそう促されると、シャルロッテは、くるりとユウヤの方を向いた。「はぁい♪ ユウヤ様~、同行をしても宜しいですか?」 シャルロッテは、少しだけ小首を傾げ、甘えるようにユウヤを見つめた。「国王様の許可を取ったんだよね? それにミリアも知ってるみたいだし、だったら良いんじゃないの?」 ユウヤは、事態を深く考えてはいなかったが、二人の了承があるなら問題ないだろうと判断し、快諾した。「わぁ~い♪ ありがとうございます」 シャルロッテは、子供のように両手を上げて喜び、リビングの空気を一気に明るくした。「では、準備が出来ましたら出発をしましょうか」 ミリアは、落ち着いた声で、皆にそう告げた。「はぁい♪」「はい」 シャルロッテとユリシスが、それぞれ元気な声と丁寧な声で返事をした。皆の準備が思ったより早く整ったため、一行は予定より早く、ユリシスの故郷へ向けて出発した。 三台の馬車が、数十騎の騎馬護衛と、それに続く数十騎の騎乗騎士に囲まれ、大規模な隊列を組んで進んでいく。その圧倒的な存在感とは裏腹に、俺が乗った馬車の内部は、二人きりの穏やかな空気に満ちていた。 仲直りしたばかりのミリアの膝枕で横になった俺の髪を、彼女の細く白い指が、ゆっくりと優しく梳いていた。馬車の規則的な揺れと、膝の温かさが、心地よかった。「ユウヤ様と久し振りに
「ですわね……本当の妹の様な感じですわね」 その言葉を聞いて、シャルロッテは、一瞬で表情を曇らせた。そして、何かを思い出すように、静かに話し始めた。 シャルロッテは、少しだけ顔を曇らせて、続けた。「でも、お姉様が怒ると、とても恐いのです……」 その言葉には、過去にミリアの怒りに触れた時の、具体的な恐怖が蘇っているようだった。「誰でも怒れば、恐いのではないのですか?」 ユリシスは、ミリアを庇うようにそう言った。彼女から見れば、ミリアはただの優雅で美しい女性にしか見えないのだ。「お姉様は、特別だと思いますけれど……」 シャルロッテは、ユリシスの言葉にも首を縦に振らなかった。「わたしより、普段は怒らないシャルロッテが怒った方が恐いと思いますけれど……?」 ミリアは、少しだけ照れたように微笑みながら、そう返した。その言葉に、シャルロッテはさらに拗ねたような表情を見せる。「わたしが、怒っても誰も恐がらないですよ?」 ミリアはそんな二人のやり取りを、どこか微笑ましそうに眺めていた。ユリシスは、その様子を見て、皆が噂する「恐ろしいミリア皇女殿下」とは違い、ただの普通の可愛い女の子だと感じていた。彼女の真の姿に触れたような気がして、ユリシスは心が温かくなるのを感じた。「では、明日の朝は早くから動いて下さいね。遅いと置いてきますわよ」 ミリアは、突然、表情をきりっと引き締め、王女としての顔に戻った。その声には、一切の迷いがない。「はぁい」 シャルロッテは、まだ少し不満そうにしながらも、元気よく返事をした。「かしこまりましたわ」 ユリシスもまた、その凛とした雰囲気に倣い、背筋を伸ばして応えた。 ミリアは二人の返事を聞くと、ようやく、自分が話に夢中になっていたことに気づいた。ユウヤとゆっくりできるはずの時間を、完全に忘れてしまっていたのだ。ハッと息をのむと、心臓がドクンと大