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8話 不正な金貸しの調査に向かった。

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-09-28 12:05:57

♢ミリアとの合流と計画

 娘を連れてミリアの屋敷に連れてきた。門の前に立つ屋敷は、その規模と豪華さで娘を圧倒した。娘の目は、驚きと警戒心で大きく見開かれている。きらびやかな装飾や、門番の厳めしい姿に、彼女は息をのんだ。

「どこに連れて行くのよ……」

 娘は、不安そうに俺を見上げた。声には、わずかな怯えが混じっていた。

「この屋敷だけど」

「は? もしかして……貴方も、わたしをこの屋敷の主に売るつもりなの!?」

 娘は怯えたように目を丸くし、声が上ずる。その体は、恐怖で小刻みに震えていた。その表情は、絶望に打ちひしがれているようだった。

「違うっての……」

 俺は、呆れたようにため息をついた。

「じゃあ何で、こんなデカくて立派な屋敷に連れてきたのよ!嘘つき!ばか!人拐いだって町の警備兵に言うからねっ!」

 逃げようとするので腕を掴んで引き止めて説明をした。彼女は、じたばたと暴れようとしたが、俺の力には敵わなかった。その抵抗は、まるで子供の駄々っ子のようだった。

「ここで保護してもらうから少し待っててよ。中に入るのが恐かったら、屋敷に入らなくても良いけど門の外には出ないでよ?拐われても困るし」

「……それなら良いわ」

 娘は渋々ながらも納得したようだ。屋敷の門の護衛の兵士を見ると……

「あれ? 王国の兵士が何でいるの?」

 娘は兵士たちの堂々とした姿に驚いている。その瞳は、純粋な疑問で満ちていた。彼女の顔には、混乱と戸惑いが浮かんでいた。

「あ~国王と知り合いだから」

 俺は、適当に答えた。

「え? 知り合いなの? なんで?」

 うわ。面倒……。どう説明したものか、一瞬言葉に詰まった。彼女の好奇心旺盛な瞳が、俺の返事を待っていた。

「時間がないから後でで良い?」

「ううぅ……分かったけど、少し安心したわ」

 信用してもらえたらしくて、娘は俺と一緒に屋敷に入った。中に入ると、娘はキョロキョロと目を輝かせて屋敷の中を見回していた。その表情からは、今までの不安が少し薄れているのが見て取れる。まるで、初めて見るおもちゃに夢中になった子供のようだ。壁に飾られた絵画や、磨き上げられた床に、彼女の視線は釘付けになっていた。

「ユウヤ様! どちらに……ううぅ……そちらは? どちら様ですの?」

 リビングから降りてきたミリアが、俺を見ると嬉しそうに駆け寄ってきたが、娘の姿を見ると途端に不機嫌そうな顔をして、ジト目でじっと見つめてきた。階段から下りてくる豪華なドレスを着ているミリアを見て、娘は屋敷のお嬢様だと理解し、緊張して固まった。ミリアの青く透き通ったキラキラした瞳が、今はわずかに警戒の色を帯びている。その視線は、まるで侵入者を測るかのように鋭かった。

 町であった事をミリアに説明して納得してもらえた。ミリアの表情が、徐々に和らいでいく。警戒していた瞳にも、温かさが戻った。彼女の口元には、安堵の笑みが浮かんでいた。

「そうだったのですね……また人助けですか♪」

 ミリアはご機嫌な笑顔を浮かべる。その声には、俺の行動を喜ぶ気持ちが込められていた。

「ミリアも一緒にお金を借りに行く?」

 俺は、ミリアに提案した。

「うふふ……♪ 面白そうですわねっ。当然、ご一緒致しますわ」

 ミリアは楽しそうに笑った。その笑い声は、鈴が鳴るように心地よかった。彼女の"青く透き通った瞳"は、冒険心を宿しているようだった。

「じゃあ着替えてきて、平民の服ね」

「はぁい♪」

 ミリアは嬉々として階段を駆け上がっていった。その足取りは軽く、まるで踊っているようだった。彼女の心は、すでに新しい冒険へと向かっているかのようだった。

♢任務前の準備と王城への移動

「それと……ミリアのお父さん役は……軍の人が良いかな。」

 俺は隣で控えていたメイドに小声で尋ねた。メイドは心得たように頷いた。すると、ミリアが着替えてリビングに降りてきた。シンプルな平民服だが、彼女が着るとどこか上品に見え、その優雅な立ち振る舞いは隠しきれていなかった。

「よし。じゃあ、ここで待っててね」

 俺がそう声をかけると、娘は緊張してガチガチに固まっている感じになっていて、これじゃトイレにも行けないんじゃないか? その顔は強張り、瞳は不安そうに揺れていた。一応、近くに居たメイドさんにお世話を頼んでおいたが大丈夫か? メイドは、娘の不安な表情を見て、優しく頷いてくれた。その笑顔は、娘を安心させるには十分だっただろう。

「どちらに行きますの?」

 ミリアの"青く透き通ったキラキラした瞳"が、興味津々といった様子で俺を見上げた。新しい冒険への期待が、その瞳に宿っているのが見て取れた。

「まずはお城かな」

 俺は簡潔に答えた。

 馬車に乗って、お城まで移動した。王城の門を御者が帝国の旗を掲げると、検問を素通りをして王城の入り口まで馬車で入って来れた。俺とミリアが平民服を着ていたので兵士達が驚いていたが、顔を知っているので問題なくて良かった。彼らの目が、俺たちの姿を捉えて大きく見開かれるのがわかった。

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